壁と卵
タンスと冷蔵庫の間に挟まれたゴキブリがいたとしたら、僕はタンスを動かす。冷蔵庫の足元を蹴っ飛ばす。
知りません。黒い生物は閉じられた空間の中で無へと消えるでしょう。
しばしば冷蔵庫は冷たく、効率的に物を冷やします。温度は一定で冷たいそよ風で美味しいトマトやキュウリ、菜の花の煮付けなどを冷やします。
その後ろの隙間には暖かい隙間ができます。誰もが愛する気持ちのよい隙間が。
間隙には無数の生物がやってきます。暗黒生物もその一つでしょう。
あなたが暗黒生物を見たらきっと同じことをするでしょう。冷蔵庫の足元を蹴っ飛ばすのです。ぴったりと閉じた隙間から暗黒生物の髭が見えるかもしれません。そこで髭がピクっと動いたら、あなたはもう一押しするでしょう。足元を強く蹴るでしょう。
満足な殺戮が行われます。
冷蔵庫の中からビールを取り出して一服するでしょう。便利な道具です。時として、あなたの、征服心を満足させ、時としてあなたの舌を満足させる。
システムには魂などありません。一寸の魂もありません。冷やしてるだけ。なのに後ろの抹殺暗黒生物を冷凍の隙間=φ=空へと抹殺。あなたは満足。それが冷蔵庫とゴキブリ。
そういえば、冷蔵庫を作ってるのは誰??
(10年後)
「奥さんこっちきて見てください」
「あら、やーだ。なにかしらこの焦げた跡」
「ちょっとあなたー、タバコ吸わないでっていったでしょー」
「ん、待てよ。タバコの跡にしたは大きいな。」
すりすり
「あれ、なんかトゲが」
「ん、どうしましたか?」
「いや、ちょっと、この辺変じゃないですか?タバコにしては」
「そーかしら??どれどれ」
以下略
「やーね。私かしら」
「お前だろ」
「それにしてもこの冷蔵庫、ここ見てくださいよ、このシリアル。」
「えーっと、AMERICA0129 hogehoge」
「アメリカ製の冷蔵庫ですね。いいものを買ってらっしゃる。」
「ゴキブリもよく潰せるのよこのリーフリィーゲイターはコックローチィーをバリバリと蝕むのよーーーーーーーーーーーーーおほほほほほほほほほほほほ。」
ザワザワ、ザワザワ